墓守は誰がなる?何をする?祭祀財産などの法律もわかりやすく解説 | お墓のキホン | 石乃家(いしのや)

墓守は誰がなる?何をする?祭祀財産などの法律もわかりやすく解説

お墓を代々守っていく墓守の不在が社会問題になっていることをご存じでしょうか?お墓参りされなくなったお墓は放置された状態になり、墓石や遺骨の無縁化は日本全国で見られます。

「お墓が遠方にあってなかなかお墓参りができない」「墓守をしてくれる子や孫がいないため、このままだとご先祖様のお墓が無縁墓になってしまう」

ご縁があってこの記事にたどり着いたあなたも、きっとこうした悩みを抱えているのではないでしょうか。この記事では、まず墓守という言葉の意味、そして誰が墓守になるべきか、さらには墓守になった人がすべきことや墓守がいない場合の対応方法などについて、わかりやすく解説いたします。

墓守とは

墓守とは、文字通り「お墓を守る人」を意味しますが、厳密には次の2つの使われ方があるようです。

墓地や霊園の管理人

墓地や霊園の管理人を指して「墓守」と呼ぶことがあります。現在では墓地管理に関する法律が定められ、公営霊園や民営霊園には管理事務所が設置されて、きちんとした体制のもと墓地全体の管理がなされています。主な仕事として、お墓や区画の管理、埋葬の管理や「埋火葬許可証」の保管、墓所全体の清掃、共用備品の管理、お花やお供え物の処分などが挙げられます。

ですが、ひと昔前まで墓地といえば地域共同体の村人たちで共同管理するのが当たり前で、共同墓地を管理する役割を「墓守」と呼んでいたそうです。中世では、小さな庵を構えた僧侶が墓守としてそこに暮らし、それがやがてお寺になっていった事例もあるそうです。いまでも地域の自治会が管理する墓地では、墓地管理委員会を設置し、自治会のなかから当番制で墓守を選出することも少なくありません。

家族のお墓を守っていく人

もうひとつ「墓守」という名称は、家族のなかで中心的にお墓を守る人のことを指し、現代ではこちらの意味で使われることのほうが一般的です。墓守は、法律の上では「祭祀承継者」と定義されます。ご先祖様や故人の供養、お墓の掃除や管理、年間管理料の支払い、さらには寺院墓地の場合はお寺の行事への出席など、墓守はさまざまなことをしなければなりません。お墓参りは家族みんなでおこなうのが理想ですが、そのなかでも中心的な役割を担う墓守を決めておくことで、誰が責任を持ってお墓を維持管理するのかを明確にできます。

以上のように、墓守という名称は2つの意味で用いられていますが、主に家のお墓を引き継ぐべき墓守(祭祀承継者)がいないことが問題となっているのです。次の章では、具体的に誰が墓守をするべきかについて、詳しく話を進めていきます。

墓守とは

誰が墓守をするべきか

ご先祖様が受け継いできたお墓を誰が引き継ぐべきなのか。墓守を巡って家族間でトラブルになることも少なくありません。まずは社会通念上、墓守がどのように考えられ、誰が担うべきかをご紹介いたします。

法律が定める「祭祀承継者」と「祭祀財産」とは?

家族のお墓を受け継いで守っていく人のことを、法律では「祭祀承継者」と呼びます。祭祀承継者とはお墓や仏壇や位牌など、その家のご先祖様を祀るための「祭祀財産」を引き継ぐ人のことです。民法第897条では、祭祀財産や祭祀承継者について次のように定めています。

(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

(出典:e-gov法令検索「民法第897条」)

財産には、「相続財産」と「祭祀財産」があります。通常の遺産は、法律の定めに則って、各相続人に遺産を分割して相続するのが原則です。現金、有価証券や不動産などは、その価値を数値化(金額化)できるからこそ、相続人の数に分割しての相続ができます。

これに対して祭祀財産は、祭祀承継者が単独で承継するのが原則です。民法が示す系譜(家系図)、祭具(仏壇、神棚、位牌など)、墳墓(お墓)など、価値を数値化できないこれらを分割承継するのは現実的でありません(お墓を砕いて人数分に分割することはあり得えないため)。また、「お墓は長男、仏壇は次男」などと分割してしまうと、先祖供養の主体を巡ってトラブルに発展する可能性があります。

以上の理由から、祭祀承継者(=墓守)は、一人に決めるのが原則です。では、どのように決めればいいのでしょうか。

長男以外でも墓守になれる

「家は長男が継ぐ」という考えは根強く残っていますが、これに呼応する形で、お墓も長男が継ぐべきだと考える人は少なくありません。しかし、現在の法律では長男以外でも墓守になれます。先ほど引用した民法第897条を詳しく見てみると、祭祀承継者は次の手順で決めるべきとしています。

  1. 慣習に従って決める
  2. 前の祭祀承継者が遺言などで指名した人
  3. 家庭裁判所が定める人

ここでいう「慣例」とは、「家族や関係者の総意」という意味に受け取ればいいでしょう。つまり、お墓に関わりのある人たちが相談しあって決めるべきとしているのです。このように見てみると、「長男が継ぐべき」という表現はどこにも見られません。実際に、海外赴任した長男ではなく、ずっと両親とともに暮らしていた次男が、その後の供養や墓守一切を引き受けるといったケースもあります。また、家族や関係者が認めるのであれば、女性や親族以外の人でも墓守になれます。

女性でも墓守になれる

墓守は男性しかなれないものと考えがちですが、そんなことはなく、女性であっても墓守になれます。民法のなかに「祭祀承継者は男性でなくてはならない」という表記は見られず、実際に女性が祭祀承継者となって生家のお墓を引き継いでいる事例もあります。ただし、「お墓は男性が継ぐもの」という慣例は現在でも根強く、女性が墓守をする場合は周囲の理解が必要になるでしょう。特に結婚して姓が変わった女性が自身の生家のお墓を引き継ぐ場合、嫁ぎ先の夫や義父母の了承が得られないといったトラブルに発展することもあり得ます。

親族以外でも墓守になれる

さらに、墓守は親族でなくてもなれます。民法のなかに「祭祀承継者は家族や親族でなければならない」という表記は見られません。信頼のおける相手であれば、友人や知人でもなれるのです。ただし、日本のお墓文化は家制度と密接につながっているため、その家の人たちの同意が必要です。さらに、霊園によっては「祭祀承継者は〇親等以内」という形で、承継者の範囲を定めているところもあるので注意が必要になります。

祭祀承継者と実務的な墓守の役割分担という方法もあります。祭祀承継者がお墓の遠方に住んでいる場合などです。祭祀継承者は家族や親族が務め、お墓の近所に住む信頼できる友人などに実務的な墓守(お墓参りやお墓掃除)をしてもらうのです。こうすることでお墓を長く維持できます。

誰が墓守をするべきか

墓守がすべきこと

墓守がすべき役割には、どのようなことがあるのでしょうか。

お墓参りやお墓掃除

お墓参りやお墓掃除は、墓守がすべき最も大切なことです。墓地の管理者は、墓地の共用部分の管理清掃はおこないますが、それぞれの区画内の清掃や管理は、墓地の使用者が責任を持っておこなわなければなりません。年に数回お墓参りするだけでもお墓をきれいに保つことができ、数十年という長い期間であっても使用し続けられます。お盆やお彼岸、ご先祖様の命日や年末年始などにはお墓を掃除し、心静かにお参りすることで、清浄な心持ちになれるでしょう。

墓域内の管理、墓石の修繕

掃除や管理のできていないお墓は、雑草が生え、それらを放置しておくと隣接するお墓の迷惑になってしまいます。雑草や植木の越境、墓石の傾きなどで隣接するお墓に損傷を与えてしまった場合、墓守が責任もって修繕や賠償をしなければなりません。草木はこまめに管理し、墓石の劣化が見られたら早めに石材店に相談してメンテナンスや修繕を検討しましょう。

年間管理料の支払い

墓守は、墓地の永代使用者となります。その区画を永代にわたって使用できる代わりに、毎年墓地の管理者に管理費用を納めなければなりません。万が一、未払いの状態が続き支払いに応じない場合は、管理者の権限によって遺骨が移され、墓石を撤去解体される恐れがあります。最近では、墓地を取得する際に「永代管理料」として、管理費用を一括支払いとする霊園が増えています。この場合、毎年の管理料の支払いは不要ですが、区画内の管理清掃は変わらず墓守の責任のもとおこなわなければなりません。

定期的な法要や供養

お墓に眠る故人やご先祖様の定期的な供養も、墓守の大切な仕事です。一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌など、区切りの際には、菩提寺に連絡を取って法要をとりおこないましょう。法要は基本的に自宅やお寺の本堂でおこないます。法要のあとには、集まった親戚全員でお墓参りをすることで親族間の絆が強まり、お墓に眠るご先祖様も喜んでくれることでしょう。

墓守がすべきこと

墓守がいない場合のお墓の取り扱い方

「跡取りとなる子や孫がいない」「遠方に引っ越してお墓の管理ができなくなる」「お墓掃除を任せられる人がいない」など、墓守がいなくて困ってしまった場合、どのようにしてお墓を取り扱えばよいのでしょうか。

お墓参り代行サービスの利用

昨今注目を集めているのが、お墓参り代行サービスです。遠方にあるお墓へのお参りや掃除を、その地域の代行業者に依頼するのです。代行サービスの利用者はさまざまです。

  • お墓が遠方にある
  • 忙しくてなかなかお墓参りができない
  • 高齢で足腰が弱まり墓地までたどりつけない

こうした人たちが利用しています。はじめは、赤の他人がお墓参りをすることに否定的な声も寄せられていましたが、最近では、お墓参りの負担をサポートしてくれるとして利用者が増えつつあります。お墓の管理の全てを業者に丸投げするのではなく、たとえば「年に一度は帰省してお墓参りできるけど、そのときのお墓掃除の負担が大変。事前に草抜きなどの清掃作業だけをお願いする」などのように、賢く利用する人も多くいます。

祭祀承継者を探す

一時的なお墓の管理のサポートであれば、お墓参り代行業者や、あるいは信頼できる親戚や友人などに任せることもできます。しかし、自分自身が高齢になってしまったら、最終的には他の誰かにお墓の承継を託さなければなりません。そのためには元気なうちから祭祀承継者を探しておくことも大切です。少し離れた親戚にお願いしてみるのもひとつの方法です。お墓の管理を押し付けるのではなく、「お墓を新たに購入すると高額だから、うちのお墓を使ってみてはどう?」といったような、相手がメリットに感じる提案方法もあるでしょう。

なかなか実行は難しいかもしれませんが、「その家のお墓」から「みんなのお墓」という風に価値を広げられれば、幅広く祭祀承継者を探せるかもしれません。

墓じまいと永代供養

墓守をしてくれる人が見つからない場合は、今あるお墓を墓じまいして、なかの遺骨は永代供養にします。石材店に依頼して墓石を撤去し、墓域内は更地に戻します。そして、その墓域の永代使用権は、墓地の管理者に返還します。勝手に譲渡、転売することは禁じられているので注意してください。

また、お墓に納められていた遺骨は、霊園やお寺の集合墓に埋葬して、永代にわたって供養してもらいましょう。もしも遺骨だけを引き受けてくれるお墓があれば、そこに納めても構いません。

墓守がいない場合のお墓の取り扱い方

まとめ

これまでの家制度や家族観が大きく変化していくなかで、家や家族の象徴だったお墓のあり方も変化を余儀なくされています。墓じまいをする人が増えているのもそのためです。

しかし、どのような形であれ、お墓があり、ご先祖様がそこで眠っている以上は誰かが墓守をして供養しなければなりません。お墓は、自分の大切な家族や、自分のルーツであるご先祖様が眠る場所です。墓守は大変なことかもしれませんが、一人で抱え込まずに家族や親戚、さらには友人や専門家に相談して、納得できる形でお墓と向き合える環境を整えていきましょう。

 

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まとめ

よくあるご質問