お墓を相続する方法は?兄弟の誰が継ぐのか、税金や放棄できるか解説 | お墓のキホン | 石乃家(いしのや)

お墓を相続する方法は?兄弟の誰が継ぐのか、税金や放棄できるか解説

先祖から子孫へつないでいくお墓。お墓の名義人が亡くなると次世代に相続しなければなりませんが、いったい誰に受け継げばよいのでしょうか。

この記事では、誰がお墓を継ぐべきか、その際の手続きや費用など、お墓を次世代に受け継ぐ際に考慮すべきことを詳しく解説いたします。

お墓の相続とは

土地や建物と同じように、その家のお墓も次世代に相続されなくてはなりません。まずは、お墓を相続するとはどういうことなのか、基本的な考え方を押さえておきましょう。

お墓を相続するタイミング

お墓の相続のタイミングは、お墓の使用権を所有している人が亡くなったときからです。葬儀のあとはさまざまな手続きに追われますが、可能な限り早めにお墓の相続にとりかかりましょう。

お墓は「祭祀財産」

お墓は「祭祀財産」に分類されます。預貯金や土地などの「相続財産」は分割相続されるものですが、祭祀財産は、誰かひとりに受け継がれることが基本です。お金や土地などと違って、お墓のような祭祀財産は金銭的価値に変換も分割もできません。また、複数人に無理やり引き継ごうとするとトラブルが生じてしまうことから、分割をせずに1人で承継するのが原則です。

死亡届と相続

お墓の相続と遺産の相続の違い

ここまで、あえて「お墓の相続」と記してきましたが、実はお墓は「相続」されるものではなく「承継」されるものです。相続財産と祭祀財産の違いを下の表にまとめました。

  対象となるもの 特徴 受け継ぐ方法
相続財産 現金・預貯金・土地・建物・有価証券などの財産全般。借金などのマイナスの財産も含まれる。 その価値を金額に変換できるため、分割相続する。 法定相続人による分割相続。複数人可。
祭祀財産 お墓・仏壇・位牌・家系図など、故人や祖先を祭祀するためのもの その価値を金額に返還できないため、ひとりに承継する。 遺言の指定や、慣習によって決められた祭祀承継者への承継。原則ひとり。

これ以降、相続財産を「相続」、祭祀財産を「承継」と表記していきます。

祭祀財産の承継とは

祭祀財産とは、その家の祖先や家族を祭祀するためのものです。民法897条2項では、祭祀財産の種類として、系譜(=家系図)、祭具(=仏壇、仏具、位牌、神棚など)、墳墓(=お墓)と定められています。祭祀財産を受け継ぐ者のことを祭祀承継者と呼びます。祭祀承継者は原則一人です。戦前までの旧民法では、家父長制に則りその家の長男が遺産相続と祭祀財産の承継を一手に担っていましたが、戦後の新民法では、長男でなくても祭祀承継者になれます(のちほど詳しく解説します)。

相続財産の相続とは

相続財産とは、故人が遺した財産のことです。「遺産」とも呼ばれ、遺言書で指定した人または法定相続人(配偶者、子、兄弟姉妹など)に分割相続されます。たとえば、下記のようなものが相続財産です。

  • 宅地・農地・建物などの不動産
  • 借地権や借家権などの不動産上の権利
  • 現金や有価証券
  • 自動車や家財
  • 骨とう品や宝石
  • ゴルフの会員権
  • 著作権 など

また、借金やローン、未払いの税金などの、いわゆる「マイナスの財産」も遺産に該当します。これらを引き継ぎたくないのであれば、相続開始の事実を知ってから3ヵ月以内に財産放棄の手続きを行わなければなりません。

遺産相続の文字画像

祭祀承継者の役割

祭祀承継者となった人は、ご先祖様の供養を主体的におこない、お墓や仏壇の維持管理、さらにはお寺や霊園とのやりとりなどをします。具体的な役割は以下のとおりです。

お墓参りとお墓掃除

日常的なお墓参りやお墓掃除は、祭祀承継者の大切な役割です。お墓は野外にあるため、お参りや掃除は誰でもできるものですが、その責任者となるのが祭祀承継者です。墓域内の清掃だけでなく、お墓が劣化したり傾いたりした際の修繕など、お墓を末永く維持管理できるよう努めます。

先祖供養・法要の主催

ご先祖様の供養はお墓にまつわるものだけではありません。日常的に行われるお仏壇への礼拝や掃除、月参りやお盆参りなどの僧侶のお参りの受け入れ、一周忌・三回忌・七回忌などの法要の開催なども、祭祀承継者が主体となって動きます。

年間管理料の支払い

お寺や霊園に対して墓地の年間管理料を納めなければなりません。

お寺の行事やイベントへの参加

お寺で行われる法要へのお参り、イベントの準備、定期的に行われる清掃作業などがあります。場合によっては檀家役員や総代への就任をお願いされることもあるかもしれません。

お墓参りをする夫婦

お墓の承継は誰がする?

お墓は誰でも承継できます。長男でなくても構いませんし、男女も関係ありません。親族でない人が受け継ぐことも可能です。詳しく解説していきます。

民法による規定

祭祀承継者は民法第897条で、次のように定められています。

(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
(出典:e-gov法令検索「民法第897条」)

ここから、祭祀承継者の決め方は、次の3段階であることがわかります。

  1. 被相続人(故人)が指定する者
  2. 慣習に従う
  3. 家庭裁判所が定める

もう少しかみ砕いて解説するなら、1)は遺言書などで故人が指定した人、2)は関係者全員が承諾する人、3)はそれでも祭祀承継者が定まらない場合は家庭裁判所が決定する、ということです。民法にはどこにも「長男でなくてはならない」「男性でなくてはならない」「家族でなくてはならない」と書かれていません。前述したとおり、故人の遺志や遺された関係者の同意があれば、誰でも祭祀承継者になれることがわかります。

嫁いだ女性や、親族以外の人が承継する際の注意点

お墓を承継させようにも娘しかいないため、他家に嫁いだうえで、実家のお墓を自ら承継する方も、少なからずいます。その際に気を付けなければならないのは、嫁ぎ先の夫や、その家族から同意を得られるかどうかです。場合によってはトラブルに発展する恐れもあるので、承継する理由や想いを丁寧に説明して理解を得るようにしましょう。

また、故人と仲良くしていた友人や知人がお墓を承継することも法律上は問題ありませんが、親族や関係者から苦言を呈される恐れもあります。可能であれば承継権を持つ全員から同意を得ること、または故人との間に死後事務委任契約を交わし、公正証書として残しておくなどしておきましょう。さらに、霊園によっては、承継者を親族に限るところや「〇親等以内」と定めているところもあるので、事前の確認が必要です。

家計図の画像2

お墓の承継方法

お墓の承継をするには、墓地の管理者に対して承継手続きをします。必要な書類や手続きの方法は霊園によって異なりますが、基本的には次に該当する書類を揃えます。

  • 霊園が定める申請書や誓約書
  • 使用者が死亡したことを証明する書類
  • 承継者に関する戸籍の書類
  • 使用者と承継者の関係を証明する書類
  • 承継者を指定したことの証明(遺言書など)
  • 承継者を関係者が同意したことの証明(協議成立確認書など)

ここでは東京都の都営霊園の場合に沿って解説します。

共通書類

まずは共通書類として次に挙げるものを準備します。

  • 都が定める「承継使用申請書」
  • 都が定める「誓約書」
  • 申請者の実印と印鑑登録証明書
  • 申請者の戸籍謄本
  • 戸籍謄本など(使用者(故人)と申請者の戸籍上のつながりが確認できる書類)
  • 東京都霊園使用許可証
  • 手数料1,800円
  • 郵送料として460円分の切手

これらに加えて、ケース別にその他の書類が必要となります。具体的に解説していきます。

承継者の指定があった場合

故人による承継者の指定があった場合、指定された本人が申請を行います。その際、次のものを準備します。

  1. 使用者の死亡記載の戸籍謄本類
  2. 遺言書などの原本(承継者の指定の記載があるもの)

1)は故人がたしかに死亡したことを証明するためのものであり、2)は故人が確実にその人を承継者に指定していることを証明するためのものです。

承継者の指定がない場合

承継者の指定がない場合は、揃えるべき書類が異なる場合があります。

家族のなかで承継者が自然と決まっている場合

すでに葬儀や法事などで故人の祭祀を取り仕切っている人がいる場合、そのことを証明できるものを用意します。宛名にその人の名前が記されている葬儀費用の領収書や法事の施行証明書などが挙げられます。

家族(配偶者と子全員)の協議で決まった場合

協議成立確認書(協議をした者全員の署名、実印の押印をしたもの)を用意して、全員が承継者に同意することを証明します。また、全員の実印の印鑑登録証と、協議者全員のつながりを確認できる戸籍謄本などを用意します。

判を押している写真

お墓を承継する際の費用

お墓の承継には大きな費用はかからず、数千円〜数万円程度の手数料のみです。遺産相続で発生する相続税に該当するものもありません。ただし、承継手続きを司法書士や行政書士に依頼する場合は、別途報酬を支払う必要があります。また、お墓を承継したあとは、霊園に対して管理費の支払いが生じます。

旅人と彫刻されているお墓

お墓を承継する際の注意点

お墓の承継の際には、次の点に注意しましょう。

お墓の承継は放棄できない

相続財産は相続放棄ができますが、祭祀財産の場合は、祭祀承継者に選ばれた人はその権利を放棄できません。お墓やお仏壇が不要となってしまった場合は、墓じまいや仏壇じまいなどの選択肢がありますが、これも祭祀承継者の責任のもと行われます。

霊園ごとの使用規則を確認

お墓の承継に関する決まりは霊園によって異なります。民法の解釈では相続人や親族以外でも祭祀承継者になれますが、霊園によっては親族に限るとするところも少なくありません。先ほど例に出した東京都営霊園の場合も「祭祀主宰者であること」と、「原則として使用者の親族であること」を承継者の条件としています。承継手続きに必要な書類も、霊園によって異なります。事前に使用規則を確認しておきましょう。

ビックリマークに指を差す人.

お墓を承継できなくなったら墓じまいをする

お墓を承継できなくなった方は元気なうちに墓じまいをし、お墓のなかのお骨を永代供養にしておくことで、将来に対する不安がなくなり、家族に迷惑をかけずに済みます。

墓じまいをご検討の方は、どうぞこちらの記事をお読みください。

墓じまいを検討している方へ。費用、手順、改葬先や注意点を徹底解説します。

お地蔵様とお墓

まとめ

大切なご先祖様が祀られてきたお墓です。家族みんなで話し合って、誰もが納得いく形でお墓を承継することこそが、祖先や故人の一番の供養になることでしょう。

 

墓地や霊園の購入などを検討されている方は、お気軽に石乃家の総合案内や資料請求にてお問合せください。

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