墓石建立者の名前が朱色なのはなぜ?意味や色を抜くタイミングを紹介 | お墓のキホン | 石乃家(いしのや)

墓石建立者の名前が朱色なのはなぜ?意味や色を抜くタイミングを紹介

墓石にはさまざまな文字が彫刻されていますが、一部の文字だけ朱色になっているのを見たことはありませんか?

一般的に墓石を建立した方の名前を朱色にするといわれていますが、これにはどのような意味があるのでしょうか。

この記事では、墓石の彫刻文字や色が入る理由について、解説いたします。

お墓には何が彫られている?

お墓をあらためて観察してみると、正面や側面、背面などにさまざまな文字が彫刻されていることが見てとれます。まずは墓石にどのような文字が彫刻されているかをご説明いたします。

軸石の表面には、家名、宗派の言葉、象徴的な一語など

最も頻繁に目にするのは、軸石(仏石)の正面です。私たちがお墓参りする際は、まさにこの軸石の正面を見ながら手を合わせます。お墓にとって最も大切な場所ともいえるでしょう。

ここには「〇〇家之墓」のような家名や、「南無阿弥陀仏」「倶会一処」「南無釈迦牟尼仏」「南無大師遍照金剛」「南無妙法蓮華経」などと、その家の宗派が大切にしている言葉などを刻みます。最近よく見かける洋風のモダンな墓石の場合はより自由度が高くなり、「ありがとう」「絆」「安穏」など、その家のつながりを象徴する一語を彫刻するのが人気です。

故人様やご先祖様の戒名や命日など

軸石の側面や、「霊標」と呼ばれる板石には、ご先祖様にまつわる事柄を彫刻します。主に、お寺から授かった「戒名」、生前のお名前である「俗名」、命日や年齢などです。

なお、お墓をはじめとする仏事では年齢を数え年にすることが多く、満年齢より1歳ないし2歳加算します。

家紋

その家のシンボルである家紋は、台石や水鉢に彫刻します。「玉垣」と呼ばれる墓地区画を囲む石への彫刻も少なくありません。

墓石建立者と建立年月

軸石の裏面や側面には、そのお墓を建てた人の名前と時期が彫刻されます。

<彫刻例>
令和5年3月吉日
 石乃家太郎 建之

墓石建立者とは、そのお墓を建てた施主のことです。実際に建立にかかる費用を支払い、故人様やご先祖様の供養を主体的に取り仕切る人のことです。ではなぜ、わざわざ墓石建立者の名前を彫刻しなければならないのか、そして建立者名を朱色にしているのでしょうか。次章では、こうした疑問に詳しくお答えしていきます。

墓石の彫刻文字に色を付ける様子

墓石に建立者名を彫刻する理由

まずは建立者の名前を彫刻する理由について見ていきます。主に2つの理由が考えられます。

後世に正しい情報を伝えるため

ひとつは、後世に正しい情報を伝え、あとから振り返ったときに「誰がこのお墓を建てたのか」を一目で判別するためです。お墓は世代を超えて祀られていくものです。石に建立者名を刻むことで、いつ誰がこのお墓を建てたかを記録し、後世に伝達できます。

霊園の規定のため

もうひとつは、霊園の規定によるためです。墓石建立者名を彫刻することが、墓地の転売や譲渡の防止につながります。
墓地の購入とは、区画そのものの購入ではなく、区画の使用権を購入することです。墓地を取得したあとに、その使用権を他人に転売や譲渡することは許されません。そのため、公営霊園や民営霊園では、墓地の利用規約で「墓地使用者の名前を墓石に彫刻すること」と義務付けているところが少なくありません。こうすることで、そのお墓の建立者と墓地使用者とが同一人物であることの証になります。

墓石の黒い彫刻文字

お墓に朱色の彫刻が入る場所

墓石の建立者名には朱色を入れます。しかし、「建立者だから朱色を入れる」というわけではありません。正しくは「生きている人の名前に朱色を入れる」からです。そのため、墓石建立者以外でも、「生前戒名」を授与している方の場合、戒名や俗名に朱色を入れます。また、墓石建立者が亡くなってしまうと朱色を抜きます。

墓石建立者名の朱色の例

墓石建立者の場合、その方の名前のみに朱色を入れます。苗字には入れません。建立者名を連名にする場合は、全員の名前を連ねて彫刻します。そして連名のなかで、現在も元気に生きている人の名前の部分(苗字は除く)に朱色を入れます。

仮に、太郎さん、次郎さん、三郎さんの3名でお墓を建て、建立者名を連名にしたとしましょう。そして太郎さんだけが先に亡くなってしまった場合は、次のようになります。

平成30年3月吉日
 石乃家太郎
    次郎
    三郎 建之

生前戒名の朱色の例

元気なうちにお寺から授かる戒名を「生前戒名」と呼び、あらかじめお墓に刻んでおくという人も少なくありません。この場合、戒名の2字と、俗名の名前の部分を朱色にします。戒名とは、厳密には院号、道号、戒名、位号の4つで構成されるのが基本で、このうち戒名に相当する2字のみを朱色にするのです。

たとえば、

光明院 清心 慈大 居士  
院号  道号 戒名 位号

…という戒名を頂いた場合、墓石には次のように刻み、朱色が入ります。

光明院清心慈大居士 
   俗名 石乃家太郎 

ここに刻まれる方はまだ健在なので、戒名と俗名だけを彫刻し、戒名の2字と俗名の名前のみを朱色にします。

グレーの墓石と黒い彫刻文字

墓石建立者の名前が朱色(赤色)の意味

墓石建立者や生前戒名に朱色が使われるのには、どのような意味があるのでしょうか。

朱色は健康長寿を願う色

墓石建立者を朱色にするのは、健康や長寿を願うためであり、そのルーツは中国の古代王朝、秦の始皇帝にまで遡るといわれています。秦の始皇帝が不老長寿を願っていたのは有名な話で、それを実現するために数多くの方士(古代中国において不老長寿を追い求めた修行者。のちの道教の道士につながる)に、不老不死の薬を探し出すよう命じました。

方士や道士が金石を砕いて調合した薬が「金丹」です。金丹は金と水銀でできており、この水銀の原料こそが辰砂(しんしゃ)と呼ばれる赤い鉱物だったのです。お墓の朱色はここから来ています。辰砂は、道教において仙人になるための秘薬の原料として珍重され、秦の始皇帝も自身のお墓の地下に水銀の川を張り巡らせたほどです。

このように、辰砂を原料として作られた不老長寿の薬「金丹」をはじめ、やがて中国社会において朱は不老、長寿、健康を願う象徴の色となっていきました。中国の建造物にさまざまな朱色が使われているのはこのためで、まもなくこうした文化や思想が日本にも流入します。

お墓は亡くなった人を埋葬する場所であると同時に、自身の幸せを祈る場所でもあります。それは先祖と自分を、死者の冥福と自分の幸福を同一に考える日本人の死生観によるものかもしれません。いつまでも元気で、健康でありたい。朱色には、そうした願いが込められているのです。

朱色以外に使われる色

なお、お墓の彫刻部分に入れる色は、朱色だけではありません。

  • 黒や白
    一般的に多いのは白や黒です。これらには、長寿や健康を祈るといった深い意味はなく、見栄えをよくする、文字を見やすくするためのものです。墓石に文字を彫刻すると、彫刻した素彫り部分と表面の磨き部分の見境がつきにくく、文字がしっかりと判別できません。白や黒を入れることで、文字がくっきりと見えるようになります。
    白と黒のどちらを入れるかは家族の好むほうで構いません。落ち着いた雰囲気にするなら黒、しっかりと文字の見栄えをよくしたいというのであれば白です。使用する石材の色目とのバランスから検討することもあります。
  • 金色
    九州地方、特に長崎県内で多く見られるのが金色です。大陸に近い九州の、そして鎖国時代に出島を通じて貿易をしていた長崎特有の傾向だといえるでしょう。墓石の金色も、そのルーツは中国にあるとされています。
    古代より中国では、一族繫栄や豊作を祈願するために、土地や家の守り神として『土神』を祀っていました。この土神に捧げるものとして、象徴的に金色を入れているという説です。中国のお盆ではお金を燃やす風習があり、これは全世界の万物の霊がいたずらをしないよう金銀貨や着物などを模したものを燃やしたのだそうです。つまり、金を媒介にして生者と死者がつながる文化があり、これが時を経て日本の墓石に『金色』を入れるようになったとも考えられています。
  • あえて色をいれない
    石本来の素材を活かしたいという方の場合、あえて色を入れず、素彫りのままにすることもあります。たとえば黒御影石の場合、彫刻した部分はグレーになるので、色を入れなくても黒とグレーのツートーンになります。また、国内最高級御影石の庵治細目石は、その石目の細かさが美しく、こうした石材そのもののよさを損なわないために色を入れない選択をすることも少なくありません。

 

どの色を入れるか、自身の想いと石材店のアドバイスを考慮して決めていきましょう。

赤い墓石と彫刻文字

朱色で書かれた墓石建立者が亡くなった場合はどうする?

朱色で書かれた墓石建立者が亡くなってしまった場合は、朱色を抜く作業をおこないます。朱色の部分に専用の除去液を塗布して、塗料を削り取ります。石の目に入り込んだ朱色を抜き取るのは難しいため、石材店に依頼しましょう。最終的に朱色は、周りの文字の色に合わせる(白や黒)ので、その上から直接ペンキを入れます。
もし素彫りで、上から白や黒などの色を入れない場合、除去液だけでは朱色が抜けきれないようであれば、サンドブラストを用いて表面を削り取ることもあります。

生前戒名が彫られている場合

生前戒名が彫られている場合は、朱色を抜いて、白や黒や無色など、他の文字色に合わせます。また、その方の命日や年齢を追加彫刻しなければなりませんので、あわせて石材店に連絡しましょう。軸石に彫刻する場合は、工事に先駆けて僧侶にお性根抜きをしてもらわなければなりません。霊標であれば、お性根抜きは不要とされています。

俗名で彫られている場合

もしも戒名などを授からずに俗名のみを彫刻しているのであれば、どうするかは家族の意志により決定して構いません。ですがその場合は、一般的なしきたりに則って、朱色を抜いておくのが無難でしょう。

添えられた仏花

まとめ

お墓に建立者名を刻む理由、そして朱色が入っている理由をおわかりいただけたでしょうか。墓石に建立年月や建立者名を彫刻しておくのは、後世に正しい情報を伝えるためです。そして、朱色を入れるのは、この世に生きている人たちの健康や長寿を願うため。こうして深く知ってみると、お墓は故人様やご先祖様を埋葬するためのものに加えて、私たち自身の幸せを願う場所でもあるのだとあらためて感じられるかもしれません。

 

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黒い墓石と彫刻文字

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