お彼岸にやってはいけないこととは?マナーやタブーについても解説
お彼岸の時期が近づくと、お供え物のお花やお菓子がスーパーやデパートなどの店頭に並びます。この時期にお墓参りに行く方も多いでしょう。
ところでお彼岸の時期には、不適切な行事やイベント、おこないがあるという言い伝えがあります。果たしてお彼岸の時期に「やってはいけないこと」とは、どのようなことなのでしょうか。
この記事では、お彼岸に避けるべき行事やイベント、逆にお彼岸におこなって欲しいことを紹介します。
お彼岸とは
お彼岸は、彼岸つまり「あの世」にいるご先祖様を供養する目的でおこなわれるしきたりです。
彼岸の反対は「此岸(しがん)」といって、私たちがくらしている「この世」をあらわします。春分の日と秋分の日は、彼岸と此岸が通じやすくなる時期と考えられており、ご先祖様の供養を介して自分自身を見直す時期でもあります。
お彼岸の由来
お彼岸は、インドの古い言語であるサンスクリット語の「paramita(パーラミタ)」が語源です。これを中国語で「到彼岸(とうひがん)」と訳され、日本では「彼岸」と呼ばれるようになりました。
しかし、インドや中国にはお彼岸にあたる行事はありません。お彼岸は日本独自の文化であり、古くからのならわしです。
お彼岸の時期
お彼岸の時期は、春と秋の年に2回あります。どちらも春分の日と秋分の日を中心とした1週間を指しており、「春のお彼岸」「秋のお彼岸」などと呼ばれます。
春分の日と秋分の日から前後3日間を含む、計7日間がお彼岸の時期です。
- 春のお彼岸:春分の日の3日前から数えた7日間
- 秋のお彼岸:秋分の日の3日前から数えた7日間
ちなみに2023年の春分の日は3月21日(火)、秋分の日は9月23日(土)なので、お彼岸は以下の日程となっています。
- 春のお彼岸:3月18日(土)~3月24日(金)
- 秋のお彼岸:9月20日(水)~9月26日(火)
お盆との違い
お彼岸によく似たならわしとして「お盆」があげられます。
お盆の時期は、一般的に8月13日頃です。お彼岸の時期が日本全国で統一されているのに対し、お盆の時期は地域によって若干異なります。
これは、地域ごとに採用している暦(こよみ)が異なるからです。旧暦でのお盆を採用した地域が大半ですが、東京や函館などの一部の地域では新暦を採用しています。
お盆の時期には開きがあるものの、その由来や目的に違いはありません。ご先祖様を彼岸から自宅にお迎えし、供養を目的として、お供えやお墓参りをおこないます。
お盆とお彼岸は、どちらもご先祖様を供養する行事ですが、両者の違いはご先祖様をお迎えするか否かです。お盆はご先祖様をお迎えして供養しますが、お彼岸はご先祖様をお迎えしません。お彼岸は、此岸からご先祖様をお迎え供養し、自身のおこないを見直す時期です。
お彼岸にやってはいけないこと
昔から、お彼岸にはやってはいけない行事があるといわれています。特に年配の方々は「縁起が悪い」「不謹慎ではないか」といって、お祝い事をお彼岸におこなうべきではないと認識しているようです。
しかし、実はお彼岸にやってはいけないことは存在しません。お彼岸は喪に服する時期ではありませんし、仏教的な根拠もないからです。
しかし、気にする方がいらっしゃる以上、避けた方が無難であるとも考えられます。またお彼岸は、法要やお墓参りの準備などで忙しい時期です。周囲に配慮する意味でも、お彼岸に行事が重ならないよう、時期の調整も検討してみましょう。
お宮参り
赤ちゃんが産まれた際には、神社へお参りに行き、氏神様に子どもの誕生を報告し健やかな成長をお祈りします。これは「お宮参り」といい、生後1ヵ月を目安におこなわれる行事です。
お宮参りの他にも、七五三や安産祈願など、神社でご祈祷してもらう行事をお彼岸におこなうのはタブーとされています。神様を祭る行事である「神事(しんじ)」と仏事は、同時におこなうべきではないといわれているためです。
もし生後1ヵ月がお彼岸の時期に重なる場合は、後ろにずらしてもよいか、神主さまに問い合わせてみてはいかがでしょうか。
引越し
引越しや新築祝いをお彼岸におこなっても、タブーではありません。
特に春のお彼岸は、新生活がスタートする前であり、引越しの多い時期です。どうしても別の日程で調整できない事情もあるでしょう。
しかし、お彼岸はご先祖様を供養し、自身のおこないを振り返る大切な時期です。引越しや新築祝いなどで時間を取られてしまうと、お彼岸の本来の目的が果たせない可能性があります。このことから「引越しをお彼岸の時期におこなうべきではない」といわれるようになったのでしょう。
納車
新車を購入した場合、縁起のよい日にちを選んで納車してもらう人もいらっしゃいます。納車可能日が大安吉日に近い場合は、その日に納車してもらいたいと願うのも自然なことでしょう。たとえお彼岸の期間中に大安吉日があり、その日に納車してもらったとしても問題はありません。
ではなぜお彼岸に納車をするべきではないと考えられているのでしょうか。その理由は、「喪」の期間中に「新しい事を始めるのは避けるべき」との考えがあるからです。
繰り返しになりますが、お彼岸は「喪」の期間ではありません。そのため、お彼岸に納車しても不謹慎ではありませんし、誰かに迷惑をかけるといった心配も不要です。
結婚式
お彼岸に結婚式がタブーとされている理由は、次の2つが考えられます。
- 「お彼岸にお祝い事をおこなうべきではない」との考え
- お彼岸はご先祖様の供養の準備で多忙な時期であるから、結婚式は迷惑になるとの考え
お彼岸は「喪」ではありません。お彼岸に慶事をおこなっても縁起が悪いことはなく、仏教の教えにも反していません。しかしなかには、お彼岸を慌ただしく過ごしている方がいらっしゃいます。
気になるのであれば、お彼岸を避けられないか検討するのもおすすめです。もし仕事などのスケジュールの都合でこの時期しかできないのであれば、家族や親族に丁寧に説明し、理解を得ましょう。
お見舞い
ご先祖様や故人を供養するお彼岸の時期にお見舞いに行くと「不吉である」「死を連想させる」ととらえられてしまう可能性があります。
仏教的には、お彼岸にお見舞いに行ってはならないという教えはありません。しかし、気にされる方がいるかもしれないので、お彼岸の時期のお見舞いは控えたほうがよいでしょう。
水辺での遊び
お彼岸やお盆の時期には、充分な供養をされずにさまよう霊が、水中で足を引っ張るといわれています。もちろん迷信であり、根拠はありません。
しかし春のお彼岸には春の嵐と呼ばれる強風が吹いたり、秋のお彼岸には台風が接近したりと、水辺で遊ぶには危険がともなうのも事実です。
屋外で過ごすのが気持ちよい時期ではありますが、水辺で遊ぶ際は、お子さんから目を離さないようにしましょう。
彼岸花の持ち帰り
秋のお彼岸の頃、真っ赤な色で人々を魅了させる彼岸花。「彼岸花を持ち帰ると火事になる」との迷信がありますが、実は迷信以上に怖いのが彼岸花の持つ毒性です。
彼岸花はリコリンやガランタミンといった強い毒をもっています。誤って口にすると、下痢や嘔吐、呼吸不全などを引き起こす可能性があるため、小さなお子さんには特に注意してください。
お彼岸におこなうこと
お彼岸にやってはいけないことを確認したところで、お彼岸におこなうべきことも確認しておきましょう。
お墓参り
ご先祖様の供養のため、お墓参りに行きましょう。
その際、お墓をきれいに掃除すると、気持ちよく手を合わせられます。掃除の前にはご先祖様へのご挨拶も忘れずに。お墓に向かって手を合わせ「これから掃除させていただきます」と挨拶しましょう。
まずは墓石に水をかけて、柔らかい布やブラシで磨きます。それから、雑草や落ち葉を取り除きます。墓所内に植木がある場合は、伸びすぎた枝を切り揃えてください。
掃除が終わったら、お花を飾り、お供え物やお線香をお墓に供えましょう。
お仏壇の掃除
お彼岸には、お仏壇も丁寧に掃除しておきましょう。
普段はあまり掃除することがないかもしれませんが、お仏壇を掃除すると心を磨く修行にもなります。お仏壇を掃除する前には、お参りしてご先祖様に了承を得ましょう。
お仏壇のなかには多くの仏具があります。掃除で移動させると元の場所がわからなくなる可能性があるため、取り出す前に写真を撮っておくと安心です。
仏具を取り出したら、毛払いと呼ばれるはたきのようなもので、お仏壇についたホコリを取り払います。
その後、柔らかい布で乾拭きしましょう。仏具も同様に、毛払いでホコリを落としてから、柔らかい布で乾拭きします。
仏具を戻したら、ご先祖様に掃除が終わったことを報告して完了です。
お供え物の準備
お彼岸にお供えする定番として、ぼたもち・おはぎがあります。どちらも炊いたもち米をあんこで包んだ和菓子ですが、由来が異なるため名称が異なります。
ぼたもちは春のお彼岸で供えるお菓子で、牡丹(ぼたん)の花が由来です。牡丹の花は春が見頃のため、春のお彼岸には「ぼたもち」を備えます。
おはぎは秋のお彼岸で供えます。おはぎの由来は、秋に咲く萩(はぎ)の花です。
ぼたもち・おはぎの他には、季節の花や果物、故人が好きだった食べ物や飲み物をお供えするとよいでしょう。
彼岸会(ひがんえ)への参加
彼岸会(ひがんえ)とは、お彼岸におこなわれる仏教行事です。寺院では、檀家や地域の方々に向けたさまざまな法要がおこなわれます。
彼岸会には、落ち着いた服装で参加します。喪服である必要はありませんが、男性なら黒やグレーなどのスーツ、女性は黒系のワンピースやアンサンブルなどがおすすめです。
また彼岸会に参加する際は、お布施の用意も必要です。お布施の相場は3千〜1万円となっていますので、忘れないように準備しておきましょう。
お彼岸に関するよくある質問
最後に、お彼岸に関するよくある質問を紹介します。
お彼岸のお墓参りはいつ行くべき?行けないときはどうすれば?
お彼岸のお墓参りの日程に、特に決まりはありません。春分の日と秋分の日の前後3日間を目安として、都合のよい日程でお墓参りに行きましょう。
どうしてもお彼岸の時期に都合がつかない場合、無理をする必要はありません。お仏壇やお位牌に手を合わせ、ご先祖様を供養しましょう。
初めてのお彼岸は何か特別なことをするの?
故人が亡くなって初めて迎えるお彼岸を「初彼岸」といいます。初彼岸は、四十九日を終えて初めて迎えるお彼岸のことですが、特別なことはありません。
いつも通り、お墓参りやお仏壇の掃除、お供え物の準備をしてお彼岸を過ごしましょう。
まとめ
「お彼岸でやってはいけない」といわれていることの多くは、古くからの迷信によるものと、周囲への配慮から生まれたマナーの2つに分けられます。
仏教的に、お彼岸にやってはいけないという教えはありません。
しかし「縁起が悪い」や「不謹慎である」と気にされる方もいらっしゃいます。
迷信やタブーの根拠はさておき、親族や友人の考えを尊重し、周囲への配慮は忘れないでおきたいですね。
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