お盆っていつ?地域によって違う理由とは?
お盆とはいつのことを指しているかご存じでしょうか?
7月の終わりから8月まで夏休みになる子どもたちとは異なり、大人にとっての夏休みはお盆の前後が一般的です。帰省したり旅行したりと、楽しみな予定を立てるのが恒例となっている家族も多いでしょう。
実はお盆には数パターンあり、日本中のどこでも同じ時期にお盆を迎えるのではありません。
そこでこの記事では、お盆の明確な期日、仏事としてのお盆の過ごし方を紹介します。
お盆は具体的にいつからいつまで?
8月中旬がお盆と認識している方も多いと思いますが、実はお盆には大きく分けて3種類あります。
ここでは3種類のお盆の具体的な日付、3種類のお盆が存在する理由について解説します。
旧盆
沖縄県と奄美地方では、旧盆と呼ばれるお盆を採用しています。
お盆期間は8月8日から9月6日あたりですが、毎年日程は異なります。なぜ毎年違うのかというと、月の満ち欠けを優先して決めているからです。8月から9月の満月となる日をお盆にしています。
2023年の旧盆は、8月28日(月)から8月30日(水)の3日間です。
なお、沖縄では初日の8月28日を「ウンケー」、8月29日を「ナカビ」、最終日の8月30日は「ウークイ」と呼ばれます。
7月盆
東京を中心とした都市部や静岡市の一部などでは、7月13日から7月16日までがお盆期間です。これは7月盆や新歴盆と呼ばれています。
7月15日を中心とし、さまざまなお祭りや催しがおこなわれています。
8月盆
旧盆と7月盆の地域を除いたその他大半の地域は、8月13日から8月16日までがお盆です。大半の地域で採用されているお盆なので、お盆休みといえば8月の半ばをイメージする方も多いのではないのでしょうか。
8月15日をお盆の中心とし、盆踊り大会や灯篭流し、花火大会などがおこなわれています。
地域によって異なる理由
このように、お盆期間は地域によって異なります。同じ日本なのに、なぜ地域によってお盆期間に違いがあるのでしょうか?その理由は、旧暦と新暦の差異にあります。
旧暦とは、月の満ち欠けを基準とした暦のことで、明治時代まで利用されていました。新暦に移行された理由は、月を基準とした暦では年間に10日以上も差異が生じてしまうからです。
新月から次の新月までの1周は平均29.5日のため、1年間は354日の計算となります。少しずつ生じた差異を修正するため「うるう月」と呼ばれる調整のための月を、3年に1度のペースで導入していました。
旧暦が月を基準にしているのに対し、新暦は太陽の動きを基準にしています。太陽は365.24219日で地球を1周するため、1年を365日として設定されています。4年に1度「うるう年」を儲けて、調整しています。
新暦は明治5年から現在まで利用されている暦です。新暦が採用されたことにより、これまでの行事は1ヵ月程度、後ろに移動してしまいました。
明治政府に忠実に従った都市部では、素直に新暦を採用して7月盆となりましたが、旧暦の7月13日を新暦に当てはめて8月13日〜とする地域もあったといわれています。
新盆や初盆はいつ?
旧盆があるなら新盆もあるの?と疑問が湧いてきそうですが、新暦によるお盆のことは「新盆」とは呼びません。
遺族が亡くなってから四十九日は喪に服す期間ですが、四十九日を過ぎてから初めて迎えるお盆のことを新盆(しんぼん、にいぼん、あらぼん)や初盆(はつぼん)といいます。旧暦によるお盆のことを指す旧盆とは、そもそも考え方が異なります。
お盆の由来について
お盆の意味や由来について、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。
そもそもお盆とは、仏教的な考えによる行事です。仏教用語では「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ばれます。「うらぼんえ」はインドの古い言葉であるサンスクリット語の「ウラバンナ」が語源です。ウラバンナは「逆さ吊り」を意味しています。
昔、あの世で逆さ吊りにされている母親を助けたいと願う弟子が、お釈迦様に相談しました。お釈迦さまは「施し与えることで母親を救い出せるだろう」と、弟子に教えを与えました。弟子はお釈迦様の教えに従って修行を重ねるうち、母親を苦しみの世界から救い出したといいます。
功徳によって先祖を苦しみから救い出したことから、盂蘭盆会の時期には帰省してご先祖様を迎える習慣が生まれたようです。
また仏教では、人は死後に輪廻転生という過程を経て、再び生まれ変わるとされています。
しかし死者の霊は、輪廻転生の過程で迷い込んでしまうことがあるそうです。そこで、迷い込んだ霊を救うために、お盆がおこなわれるようになったとされています。
祝日ではないのにお盆休みが存在する理由
カレンダーを見てもわかるように、お盆は祝日ではありません。
国民の休日や日曜日が赤色で表示されているのに対し、お盆期間は黒色で表示されています。しかし実際には、役所や多くの企業でお盆休みが採用されています。
お盆の期間を休みにする理由は、江戸自体に存在した藪入り(やぶいり)の慣例からです。藪入りとは、正月とお盆の年2回、奉公人が休暇をもらって実家に帰る貴重な機会のこと。奉公人以外にも、嫁入りや婿入りした人が里帰りする時期としても定着していました。
現代でも、お盆期間は里帰りして家族と過ごし、ご先祖様の供養をする時期と考えられています。
お盆の過ごしかた
お墓に眠るご先祖様は、お盆に里帰りをするといわれています。現世に生きる私たちは、さまざまな準備をしてご先祖様をお迎えし、また安心してあの世に帰られるように供養をおこないます。ここでは、昔ながらのお盆の過ごし方を確認してみましょう。
準備編:お盆前にするべきこと
お盆は祖先の霊を迎えるための大切な行事です。家族や親戚が集まる貴重な機会でもあるため、念入りに準備をしておきましょう。
ここでは、お盆を迎える前にやっておくべき準備について説明します。
釜蓋朔日(かまぶたついたち)
旧暦7月1日は「地獄の釜の蓋が開く日」という言い伝えがあります。この日を「窯蓋朔日(かまぶたついたち)」といいます。
釜の蓋から出たご先祖様の魂が、あの世からこの世に帰ってくる日です。新暦の8月1日から、およそ2週間をかけて遺族の待つ場所へと向かいます。
お盆の始まりともいえる釜蓋朔日から、ご先祖様を迎える準備を始めておきましょう。お墓の周りに雑草が生い茂っている場合は、草刈りをしてご先祖様の通り道を整えておきます。
棚幡(たなばた)
旧暦7月7日の七夕である8月7日は、棚幡(たなばた)といいます。旧盆の地域では、精霊棚に幡を供えたり、仏具を水洗いして清めたりする日です。
余裕があれば、お墓の掃除や草刈りなどをおこなっておくと、直前に慌てなくて済むでしょう。
お盆期間
迎え火(迎え盆)
ご先祖様が道に迷わないよう火を焚くことを「迎え火」といいます。
お盆の入りである8月13日の夕方におこなわれますが、前日や13日の早朝などに調整してもかまいません。麻の皮を剥いだ「おがら」を、平皿に乗せて火を着けます。
玄関先や庭などで焚くのが一般的ですが、ろうそくや藁などを用いる家庭、河原や広場にろうそくを並べる地域など、その形態はさまざまです。
お仏壇飾りを用意する
お仏壇の前に盆棚や精霊棚と呼ばれる祭壇を置き、お供え物や精霊馬などを飾りましょう。お盆に用意するお仏壇飾りは、地域や宗派によって異なります。
精霊馬とは、キュウリやナスにお箸を指して動物に見立てた、ご先祖様の乗り物です。キュウリは馬、ナスは牛を表現しています。
なぜ2種類の動物が用意されているのでしょうか。
- 馬:脚が速いことから、ご先祖様が少しでも早く家族のもとに帰ってこられるように
- 牛:荷物を多く積めることから、この世のおみやげを持ってゆっくり帰っていただくように
このように仏壇飾りには、お迎えする遺族の想いが込められているといわれています。
お墓参り
お盆にはお墓参りをする習慣があります。お墓参りに行く日程に決まりはありませんが、ご先祖様をお迎えする意味では、お盆の入りである13日が適しているでしょう。
現世で暮らす家族を守ってくださっている感謝の気持ちを込めて、お墓の前で手を合わせましょう。
お墓参りの前には、お墓の掃除や草抜きなどで手入れをしておきます。ご先祖様のためでもあり、お墓参りをしてくれる親族や知人への配慮でもあります。
お墓参りをするタイミングでもかまいませんが、時間に余裕があれば、前もってお墓掃除に行っておくと安心です。
送り火(送り盆)
迎え火と反対に、ご先祖様をお見送りするための焚き火が「送り火」です。7月16日、8月16日の夕方を目安に、送り火を行いましょう。
ただし最近では集合住宅も増え、火災の危険性も懸念されています。電気で焚き火を表現する置物やろうそくなどを代用してもかまいません。
片付け編:お盆飾りを片付ける
お墓に飾った灯篭やお仏壇飾りなどは、基本的には送り火が終わった直後に片付けましょう。旧暦では7月16日、新暦では8月16日の夕方が最適なタイミングです。
いつまでも仏壇飾りを片付けないでいると、ご先祖様が後ろ髪を引かれてしまい、あの世に帰れなくなるともいわれています。
とはいえ、仕事や家庭の事情などで難しいこともあるでしょう。前倒して15日におこなったり、17日にずれ込んでもかまいません。
まとめ
お盆と呼ばれる期間には3種類あり、地域によって異なります。これは地域ごとに採用した暦によって、お盆の考え方が違うからです。新暦を採用した当時の、人々の想いや理念が込められているといえるでしょう。
お盆は国民の休日ではありませんが、多くの企業や役所で8月中旬を夏季休暇として定めています。
迎え火・送り火やお仏壇飾りをする家庭は減っていますが、これを機に、お盆の由来や過ごし方について家族で話し合ってみるのもよいのではないでしょうか。離れて暮らす家族が集まることの多いお盆に、家族そろって、ご先祖様へ感謝の気持ちをあらわしましょう。
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